バースプランって何を書けばいいの?

「バースプランを書いてきてください」と、出産する施設から言われた妊婦さんがいると思います。


ぎっしり書いてきてくださる方もいれば、「何を書いたらいいのかわからなくて・・」とほぼ白紙で持ってこられる方もいます。
うまく活用することで出産の満足度はぐっとアップするので、今回の記事ではバースプランの目的や記載例をお伝えしていきたいと思います。

バースプランの目的

バースプラン。直訳すると「お産の計画」ですね。

どのように新しい命を迎えたいのか、自分なりのお産の計画を立て、それを医療スタッフと共有するためのツールがバースプランです。
バースプランを立てる目的は主に2つあるとフミは考えています。

1つ目は出産のとき自分の心地よい環境をスタッフに作ってもらいやすくするためです。
私たち助産師は産婦さんが陣痛や破水で入院されてから出産までの間、できるだけ安心して心地よく過ごしてもらいたいと思っています。産婦さんがリラックスすることで体から余分な力が抜けて、子宮口が開いてくれやすかったり、おなかの中の赤ちゃんにストレスがかかりにくかったりするからです。

例えば陣痛中は不安なので助産師が常にそばにいた方が安心できる、という方が多いのですが、逆に人がそばにいると気になってしまって落ち着かないという方もいます。

外来等で何度もお会いしたことがある方であれば、「こういう風にしてあげたほうがこの方はリラックスするだろうな」とある程度想像することができます。ですが、お産のときにはじめましての方だと、その方がどのようにしてもらいたいのかを把握するまでに少し時間がかかります。もちろん産婦さんの表情や雰囲気から推測したり、直接お話するなかでどういう風にサポートするのがベストか常に考えてかかわっていますが。

そんな時、バースプランにお産への思いやご希望が書いてあれば、私たち助産師にとって産婦さんに居心地のよい環境を提供するための大きなヒントになるのです。

2つ目の目的は事前にイメージすることで自分で生むという心の準備ができるということ。
バースプランを書くときには必然的にお産の場をイメージしますよね。陣痛が来て、陣痛が強くなって、いよいよ赤ちゃんが出てきて・・。そういうイメージするなかでお産に向けて心の準備が整っていきます。ある意味、覚悟が決まっていくわけです。自分で生むんだ、赤ちゃんと2人で頑張るんだという思いが芽生えると、それに向けて今できることはやっておこうという気持ちになります。
例えば「短い時間で安産がいいな」と考えたのなら、妊娠中にできることは適度な運動をして体力をつけること、体重を増やし過ぎないことなどがあります。

陣痛中やお産が終わってから「もっと運動しとけばよかった」「こんなに体重増やすんじゃなかった」とおっしゃる方がいます。

もちろんどんなに頑張ってもそう思うことはあるでしょうけど、もっとできることがあったのに何もやらなかったなあと後悔するよりはベストは尽くした!と思いたいですよね。

このような訳で、バースプランを活用することで出産の満足度を高めることができるのです。

例えばどんなことを書けばいいの?

陣痛中はどんな環境がいいのか、出産のときはどうか、出産後どんな風に赤ちゃんと過ごしたいのかを考えて自由に書いてもらえればOKです。バースプランには正解も間違いもありません。
とはいえ、具体的なイメージが湧かない方もいると思うので例を挙げてみたいと思います。

・照明は明るいほうがいいor暗いほうがいい
・できるだけ誰か(助産師・パートナー等)に付き添ってほしいor一人のほうがいい
・好きな音楽を聴きながらすごしたい
・好きな香りのアロマを使いたい
・生まれたらすぐに抱っこしたい
胎盤を見たい
・分娩後すぐに授乳をしたい

ぱっと考えて出てくるのはこのあたりです。施設によって対応可能なものと不可能なものがあるので、希望したことすべてができるわけではありません。実際にどこまで希望に添えるのかはスタッフさんと相談していく形になると思います。

ちなみにフミの場合は・・・
陣痛中は間接照明程度の明かりのなかで、Amazon Prime Musicの中からリラックス系の音楽をかけて、最初は夫と二人で過ごしたいです。陣痛が強くなってきたら腰のマッサージの仕方を夫に指導してもらいたいので助産師さんについていてほしいなと思います。フリースタイル分娩が可能であれば、四つんばいの姿勢で自分で赤ちゃんを取り上げてそのまま抱っこしたい。母子ともに健康であれば2時間以内に授乳を開始したいなあ・・と思います。

母子の命を守り安全に出産を終えることが一番大事なので、バースプランをすべて叶えようとは思っていません。できる範囲でこんなお産だといいなあ、という感じです。

さて、皆さんはどんなお産にしてみたいですか?

無痛分娩にすると愛情を持てないってホント?

前回に引き続き無痛分娩シリーズです。

さて、いまどきタイトルのようなことを心配される妊婦さんはあまりいらっしゃらないのですが、家族からこのように言われて困っているという声はまだちらほら聞きます。

「痛い思いをしたから愛情が湧くのよ」
「痛みを乗り越えてこそ本当のお母さんになれるのよ」

もしフミ自身が妊娠中に上記のようなことを言われたら静かに微笑んでフェードアウトします。



痛い思いをしないと愛情が湧かないのだとしたら、なんと大変なことにこの世のすべてのお父さんは子どもに愛情を持っていないことになります。


また、私は動物大好きでペットには多大な愛情をかけていますが、特に痛い思いはしておりません。しいて言えば、ハムスターに噛まれて多少痛い思いをしたことはありましたが、その痛みによって愛情が増した記憶はありません。どちらかというとちょっといらっとしました。


それから、おかあさんに本物も偽物もありません。妊娠したその時からお母さんはお母さんです。


妊娠中のナイーブな時期にいろいろ言われると自分でも思っている以上に心に響いてしまうことがあります。そんなことはない、とわかっていても、無痛分娩にする自分は甘えているのだろうか?ちゃんとした母親になれないのだろうか?と思ってしまうことがあるかと思います。不安なときはぜひ病院のスタッフに相談してくださいね。

無痛分娩って実際どうなの?

ここ数年でどんどん件数が増えている無痛分娩です。すべての医療行為にはメリット・デメリットが存在しますが、無痛分娩も同様です。今回は実際に無痛分娩とそうでない分娩の両方を見ている助産師の視点で無痛分娩について感じる点を書いてみます。

無痛分娩は無痛ではない!

無痛分娩、という言葉を聞くと痛みが全くないようなイメージをされるかもしれませんが実はそうではありません。その理由は2つありますが、まず1つ目は陣痛開始後すぐに麻酔を使用できるわけではないということです。
規則的なおなかの張りと痛みが10分間隔になった時が陣痛のスタートですが、いきなり激しい陣痛がくることは少なく、初めは生理痛のような痛みから徐々に強くなっていきます。また陣痛開始の時点では子宮口もまだ開いていないか、開いていても1~3cm程度のことが大半です。時間の経過とともに痛みが強く頻繁になり、子宮口も開いてきます。初めての出産の場合、平均的には陣痛開始から約12時間で子宮口が全開=10cmになると言われています(経産婦さんは約半分の時間)。痛みが苦手な方の場合は陣痛開始の時点から耐えがたく、麻酔を使用したいと感じる方もいらっしゃると思うのですが、実は麻酔の使用を開始するのは子宮口が3-5cmくらい開いてからのことが多いのです。あまり早くから麻酔を使用するとせっかく始まった陣痛が遠のいてしまうことがあるので、それを防ぐためにある程度の分娩進行をまってから麻酔を開始することが多いのです。つまり陣痛の最初しばらくはある程度麻酔なしで陣痛を経験する時間があるということです。
2つ目はそもそも無痛分娩の目的は痛みをゼロにすることではないということです。人によって痛みの感じ方や麻酔の利き方はそれぞれなのですが、麻酔を使用しない状態での痛みが10だったとしたら、麻酔を使ってそれを3とか5とかにするのが無痛分娩です。まったく痛みのない分娩をイメージして無痛分娩に挑んでしまうと「無痛分娩にしたのに結局痛かった」という思いが残ってしまうかもしれません。

無痛分娩の危険性は?

少し前に事故が相次いだこともあり、無痛分娩に不安なイメージを持っている方も少なくないかもしれません。麻酔という処置をするのでそれに伴うリスクは確かに否定できません。たとえばもともとの体質で麻酔薬にアレルギー反応を起こしてしまう方もいますし、最新の注意を払っていても本来入れるべき場所とは違う場所に麻酔薬が入ってしまうことで呼吸ができなくなったり、致死性の不整脈が出ることもごくまれに発生します。このような事態が生じた際にはすぐに異常を発見し適切に処置をすることが重要なので、無痛分娩を行う際には設備の整った信用できる医療機関を選択することをお勧めします。

どんな医療処置でも(たとえば採血でも腕に麻痺がおこることがあります)、一定の確率で好ましくない副作用が起きてしまうことはあります。起きうるデメリットをしっかり理解して、納得したうえで無痛分娩をするorしない、と自分で決めることが大切です。不安な点はそのままにせず、かかりつけの医師や助産師等に質問してください。

産後が楽ってホント?

無痛分娩を選択する理由の1つに「産後が楽と聞いたから」というものを挙げる妊婦さんが多い気がします。これについては半分本当で半分嘘といったところでしょうか。
確かに痛みは少ないので、体に必要以上に力が入ったり、たくさん叫んで体力を消耗したりということは少ないと思います。そのため分娩直後の疲労感は比較的少ないことが多いでしょう。ただ、無痛分娩のデメリットの一つに分娩所要時間が長くなりやすいというものがあり、時間が長くなったために結果的に疲れてしまったという人もなかにはいます。
そして助産師としてしっかり伝えておきたいのは「無痛分娩で産後の疲労が少ないからすぐ動いても大丈夫」と思っている人がいたらそれはちょっと違うよ!ということです。特に経産婦さんから「上の子の世話もあってのんびりしていられないから疲労が残らないように無痛分娩にしたいです」という声をよく聞きます。麻酔がよく効いてたとえ疲労感が少なかったとしても、分娩に伴う体へのダメージが少なくなったわけではありません。産後はしばらく安静に過ごす必要があります。産後の安静の必要性についてはまた記事をupする予定ですが、無痛分娩でもしっかり休んでくださいね。

まだまだ書きたいことはあるのですが、今回はこのあたりで一旦区切らせていただきます。私が分娩のお手伝いをさせていただいた方の多くは「無痛分娩にしてよかった~」という感想を言ってくださる方が多い印象です。経産婦さんで無痛をしていない場合と両方経験された方は「全然ちがいますね!麻酔神ですね!」とおっしゃっていました。

大学病院とクリニックの勤務の違い

大学病院からクリニックへ転職をしたフミですが、実際転職する前はかなり悩みました。禿げそうな程悩みましたが、結果転職は正解だったと現在は思っています。ただ、やはり働いて見て初めてわかった違い等もあるので書き記しておこうかと思います。転職を考えている方や就職先を検討中の方の参考になれば幸いです。


給与

これは年収で見ると明らかに大学病院の方が良かったです。クリニックは基本給が低く、手当等が多めに設定されているところが多いようです。わたしの転職先も同様でした。手当が充実している分、手取り月収はそれほど変化がなかったのですが、基本給が低いのでボーナスがかなり減り、年収は減ってしまいました。

福利厚生

説明するまでも無いと思いますが、間違いなく大学病院の方が良いです。

シフト?

わたしの場合、転職前も後も2交代制だったので勤務体制はさほど変化はありませんでした。ただ、クリニックは4週8休なのに対し、大学病院は4週8休+祝日分だったので、転職後休みは毎月1〜2日少なくなってしまいました。また大学病院は病床数が多い分、勤務スタッフの数も多かったので、体調不良等で欠員が出てもみんなで補えばなんとかなりました。クリニックは病床数が少なく、夜勤は2人体制なので休むことはほぼ不可能です。万が一、休んでしまうとペアの相手に大きな迷惑をかけてしまいます。

業務内容

大学病院では業務が細分化されていたので、助産師は助産業務に集中していればOKでした。クリニックでは今まで他の職種の方にやってもらっていたことも自分でやらないといけないことがあります。わたしの場合だと、使用後の分娩室のリネン交換や清掃、使用した機械の洗浄滅菌、薬品の在庫管理や発注、医療機器不具合時のメーカーさんとのやりとり等はクリニックで初めて経験しました。今までたくさんの人に支えられて助産業務ができていたんだなと実感しました。

入院患者さんのケア必要度はクリニックのほうが低く、分娩も大学病院のように5,6人同時進行中なんてことはないので、1人の患者さんとゆっくり関わることができます。ただスタッフ数も少ないし、分娩台が一つしかないので、ごく稀に分娩が3件程重なってしまうときはとても大変です。

転職後、一番大変だったことは医師がクリニックにいない時間があることです。大学病院では常に当直の医師が院内に居ましたし、若手の先生はいつもステーションにいたので何かあればすぐに報告相談ができました。クリニックでは休日や夜間は医師が不在です。もちろん連絡すればすぐ駆けつけてくれるのですが、医師の貴重な休息の時間なのであまり気軽に呼ぶことはできません。正常に経過していれば困ることはないのですが、分娩進行が思わしくなかったり、入院患者さんの調子がイマイチなときはどの時点で医師に連絡をすべきか悩んでしまうことは多いです。
そして、クリニックには小児科がありません。小児科医がいません。生まれてきた赤ちゃんに蘇生処置が必要な場合、大学病院ではすぐ小児科医師が対応してくれましたが、クリニックでは自分でやらなければなりません。幸いわたしは今までそのような場面に遭遇していませんが、いつ起きてもおかしく無いのでNCPRはしっかり頭に入れておこうと思っています。

ワークライフバランス

先程クリニックでは大学病院より休みの数が減ってしまったと書きましたが、実際に職場に行く回数は転職前より少なくなっています。なぜなら係活動や委員会、研究等での休日出勤がほぼゼロになったからです。大学病院の頃はひどい時には月の休みの半分は出勤することもありました。また、クリニックでは細かいカルテ入力等がないので残業はほぼありません。そのため、プライベートと仕事のバランスはかなり取りやすくなりました。日勤で帰宅後疲れすぎてシャワーも入れず寝てしまうようなことが以前はよくありましたが、いまは夕飯をしっかり作る余裕もできました。

総合的に考えて

バリバリ働いてがっつり稼ぎたい方にはやはり大きな病院のほうが向いていると思います。お給料はそこそこでもある程度余裕をもって働きたい方にはクリニックでの勤務もおすすめです!

フミの自己紹介

フミの生育歴の紹介です。

わたしは平成の初めころに関東の地方都市に生まれました。小さい頃から赤ちゃんが大好きで、幼稚園の頃の夢は保育士さんでした。街中で赤ちゃんを見かけるとじーっと見つめたり、可愛いと騒いだりしていたそうです。


成長しても赤ちゃん好きは変わらず、加えて人体の仕組みにとても興味がありました。そこで、人体に関わる→医療系×赤ちゃんに関わる仕事=助産師だ!と、高校生の時に助産師になることを決意したのでした。

夢を叶えるために都内の大学の看護学部に進学しました。4年間で看護師になるための勉強をし、なんとか看護師国家試験に合格。その後、修士課程に進学し2年間かけて助産師国家資格を手に入れました。


助産師になってからは、大学病院の産科病棟で数年間勤務。どちらかというとハイリスク分娩の方が多く、お産=怖い、という気持ちが強くなっていきました。
毎日目の回るような忙しさで、大好きだった赤ちゃんも可愛いと思えなくなり…

もともとフミは体力がある方ではないので(助産師に向いてない!?)、仕事だけでヘトヘトになってしまいプライベートを楽しむことも難しい数年でした。お付き合いしていた相手と結婚話が出ていましたが、大学病院で勤務しながら家庭を持つのは難しいと思い、結婚を機に退職。
その後は分娩を取り扱う産婦人科のクリニックで勤務しています。クリニックはローリスクの方が多く、大学病院のお産との違いにびっくりしましたが、フミにはクリニックでの勤務の方が合っていたみたいです。赤ちゃんを可愛いと思う余裕も取り戻し、毎日元気に働いています。

助産師ブログはじめます

はじめまして。

助産師のフミと申します。

皆さんは助産師と聞いてどんな仕事を思い浮かべるでしょうか?

 

出産の時に赤ちゃんを取り上げる人?

子育ての相談にのってくれる人?

 

そもそも助産師という言葉を聞いたことがない人もいるかもしれません。

 

助産師とは「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定義されています。

 

簡単に言うと、妊娠中の女性やまさに出産中の女性、産後の女性と赤ちゃんに対するケアをするのが助産師です。そして、現在の日本においては助産師は女性のみがなれる職業です。

 

上記のように、主な助産師の仕事は周産期(出産の前後)の母子へのケアですが、周産期のみではなく女性とその家族の生涯に渡る健康を支援する職業でもあります。

 

私は助産師として大学病院やクリニック等での勤務経験がありますが、どちらも忙しくゆっくり患者さんたちとお話しする時間がないことをもどかしく感じていました。


お母さんたちから質問を頂いても、たくさんお伝えしたいことはあるのに限られた時間の中で全てをお話ししきれなかったり…


もっと話したいことがありそうだな、と思うのにゆっくり聞いてあげられなかったり。


そんな思いがあったので、このブログでは臨床で伝えきれなかったことや、よく質問されることなどを書けたらいいな、と思っています。


出来るだけ正しい情報を伝えるように努力しますが、助産師フミの知識や考え方が全て正しいわけではないので、情報の一つとして見ていただけたら幸いです。